私たちが設計において大切にしている3つのこだわり
目に見えないものにこだわる
住宅を設計する時に大切にしている視点は「人と人との間合い」「人と自然との間合い」「自然と家との間合い」をデザインすることです。
その間合いを埋めるのは、オシャレな壁紙や照明器具ではなく、太陽の光であったり、風や空気の流れ、熱(断熱、空調)、素材の質感や温もりであり、五感に働きかけるデザインだと思っています。
窓を開けたとき聞こえてくる自然の音、肌で感じる風、木の葉の隙間から家に入ってくる木漏れ日。そんな日々、生活する中で「心地よくて」「小さな感動がたくさん散りばめられた」家の設計を心がけています。
強用美
「強」は構造の強さを、「用」は機能や用途を、「美」は表現や美しさを現しています。「強がなければ用は果たせない、強と用がなければ美は形だけのもの、そして、美がなければ建築とは言えない」ローマ時代の建築家が、建築に必要な概念として提唱したものですが、私たちは現代においても大切な三要素であると思っています。
「強」は三大要素の土台です。強を表す言葉のひとつが建物の強度を表す「耐震性」です。予算の大小に関係なく人命、生活を守る器を作ることは建築家として最低限の責任です。根拠のある数字で構造強度を確かめ、大地震に耐えるだけでなく、そこに住み続けることができる家の設計をしています。
もうひとつ「強」を表す言葉が、建物の寿命を左右する「耐久性」です。強度のある建物を建てても、日本の厳しい環境に耐えられなければ時間の経過とともに朽ちていきます。強い構造をいかに守るかという視点も大切にしています。
「用」分かりやすい言葉で「使い勝手」や「機能性」です。建物の強度や耐久性の低下よりも、使いづらいといった機能性に問題があることが日本の住宅の寿命を短くしている大きな理由です。ただし、機能性に富んだ既製品をたくさん取り入れたらいいというものではなく、空間に必要なものを、最適な寸法で、住まい手の暮らし方に合わせて作ることが大切だと思っています。
「美」強い表現のある空間はひと時は目を奪われて楽しめますが、長い時間心を落ち着かせることはできません。雑誌などでお洒落に映る空間ではなく、その空間に身を置いた時に心が豊かになる、暮らしが豊かになる変化に富んだデザインを心がけています。
図面にこだわる
設計事務所は設計する建物を図面ですべてを表現し、残すことで責任を果たすべきだと私たちは考えています。20枚程度の図面でも工務店や職人、現場に任せておけば家は建ちます。しかし、住まい手との打ち合わせで積み重ねてきたものを20枚で表現することができるでしょうか?私たちは、意匠図面だけでなく、構造図から水道衛生設備図、電気図、材料の加工図まで少なくとも100枚近く図面を描くことで住まい手の思いを現場に伝えています。
(※もし図面をご覧になりたい方がいましたら、ここで公開することはできませんが、事務所に来ていただければお見せすることができます。)
作成した図面はすべて竣工時にお渡ししますので、家の取扱説明書として保管していただければ、数年後、家のメンテナンスや、生活スタイルが変わって改築が必要になった時に役に立ってくれると思います。図面は「住まい手に家を末永く使ってもらえるようにという私たちの思い」の表れです。